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アユの人工採卵


こんにちは、県内水面漁連 中野です。

秋がだんだんと深まってきましたね。

この時期になると福井県内水面総合センターではアユの「採卵」が始まります。

県内水面漁連では、飼育業務の委託を受けていますので、ここで採卵の様子を紹介します。


人工採卵は、来年放流するアユを卵から育てるためです。

親として使うアユは、6月に県内河川で捕獲した天然魚です。

飼育する際に光をあてる時間や、水温を操作することによって成熟を早めます。これを「誘発」と呼んでいます。


しっかりと「誘発」できたアユたちは、体の色に劇的な変化が生じます


見慣れた体色のアユ

夏頃のアユは、このように見慣れた「緑色っぽい体色」ですが…

背中は黒、お腹はオレンジ(上がオスで下がメス)

このように黒っぽくなります。

まるで錆びてしまったかのように見えるため、この状態のアユを「錆びアユ」と呼びます。


成熟が早く進むと、採卵の時期を早めることができ、アユの飼育期間を長くとることができます。放流までの飼育期間が長いほどアユが大きく育つため「誘発」が非常に重要になってくるのです。


この錆びアユが水槽内に増えてきたら、いよいよ採卵です。


水を減らした水槽に入って選別します


まずは、親の選別作業です。オスとメスを分け、さらにメスの中から成熟したメスを選びます。

雌雄の見分け方ですが、オスは、成熟すると背中がザラつき、メスはお腹が膨張します。

また、メスは少しお腹を押して卵の出方を確認し、成熟の度合いを判別します。


メスの採卵の写真

こうして選ばれた親魚(しんぎょ)のオスから精子を、メスから卵を搾ります。

水気が入ると卵質が落ちたり、精子の寿命時間が縮むため、タオルでしっかりと拭き取ります

オスから精子を搾る

精子は事前に搾り、専用の溶液で薄めておきます。

成熟したメスから搾った卵は、顕微鏡で観察して、良質な卵を選んで使用します。


比較的良質な卵

卵質は、「油球」の状態で判別します。油球とは卵の中に泡粒のようなものです。これが細かいものを良質な卵として選別します。


卵に精子をかけた直後


スピード感が伝わりますか?

受精の作業に移ります。

メスから搾り出し卵をボールに貯め、スポイトで精子を卵にかけて、水鳥の羽で丁寧にかき混ぜます。


シュロという「毛の長いタワシ」のような道具

バケツの中で素早くシュロをかき混ぜます

卵と精子を混ぜ合わせた状態で水中に入れると受精が行われます。卵は水に触れると卵の周りに、ものに付着する性質の膜が生じます。

この性質を利用し「シュロ」に、受精した卵を付着させ水槽内に吊るします。

シュロはまるで、アユの卵のゆりかごのようです。



受精が進み、目が出てきたアユの仔魚

採卵の業務はここまでですが、その後もゆりかごの中で無事に育っているか、

発生の経過を観察します。

無事に孵化して大きくなって元気な放流種苗になってほしいです。

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